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シンガポール特許のライセンス・オブ・ライト(実施許諾用意)制度

2014年04月15日

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■概要
シンガポールでも特許をライセンス許諾することができるが、ライセンス・オブ・ライト制度(実施許諾用意制度)を利用すれば、更新手数料を半額にすることができる。
■詳細及び留意点

【詳細】

 シンガポールでは、特許が付与された後、特許権者は、当該特許をライセンス許諾することができるが(シンガポール特許法第41条(3))、さらに、誰でもライセンスを受ける権利を当然に取得可能である旨を登録簿に記入するよう、シンガポール知財庁(IPOS)に申請することができるライセンス・オブ・ライト(英語「License(s) of Right」)という制度がある(同法第53条(1))。

 

(1) ライセンス・オブ・ライト制度の流れ

 ライセンス・オブ・ライトの申請は、所定のフォーマット(様式28)に従い、シンガポール知財庁(IPOS)に提出することにより行う。手数料は80シンガポールドルである。

 ライセンス・オブ・ライトの申請があった場合、登録官により、その特許につき権利を有するとして登録されている全ての者(登録簿に登録されているライセンシー)に対して当該申請があったことが通知され、申請人である特許権者がその特許をライセンスすることが契約で禁止されていない場合に、登録簿に申請があった旨が記入される(同法第53条(2))。

 ライセンス・オブ・ライトについて登録簿に記入されると、その特許について、第三者は誰でもライセンスを受ける権利を有する。

 ライセンス・オブ・ライトについて登録簿に記入されると、特許権者が納付すべき更新手数料が、本来納付すべき額の半額となる(シンガポール特許法53条(3)(d))。

 

(2) ライセンスの条件について

 ライセンスの条件は当事者の合意により定められる。

 ライセンス条件について合意できない場合は、所定のフォーマット(様式29)により特許権者又は第三者が申請して、ライセンス条件の登録官による決定を求めることができる(同法第53条(3)(a))。

 ライセンス条件の登録官による決定を求める場合、申請者は、意図するライセンスの草案の写し及び当該所有者が依拠する事実の陳述書の写し各1部(特許権者以外の者による申請の場合は、その求めるライセンスの草案の写し1部)を添付しなければならない(所定のフォーマットはない)(シンガポール特許規則71条(1))。申請手数料は380シンガポールドルである。

 登録官は、申請者から提出された書類を他方に送付するが(同規則71(2))、送付を受けた者は、意見があれば2ヶ月以内に反対陳述書(様式3)を提出することが認められ(同規則71(3))、登録官は両者の意見を踏まえて、ライセンス条件を裁定する(同規則71(6))。

 

(3) 侵害手続について

 ライセンス・オブ・ライトを申請したことについて登録簿に記入された特許の侵害手続において、被告がライセンスを受けると約束した場合、被告に対する差止命令は認められない。また、当該ライセンスの条件に基づき、最初の侵害より前にライセンスが付与されていたとした場合に被告がライセンシーとして支払うべきであった額の2倍を超える損害賠償を被告から回収してはならない(同法第53条(3)(c))。

 なお、特許権者は、ライセンス・オブ・ライトの申請を行っている以上、侵害者である被告がライセンスを受けることを拒否することはできない。

 

 ライセンス・オブ・ライトに基づくライセンシーは、当該特許の侵害を防止するための手続を提起することを、特許権者に要請することができる(ただし、合意されたライセンス条件に別段の定めがある場合は除く)。

 特許権者がその要請を受けてから2ヵ月以内に手続を提起することを拒絶するか、その要請を放置する場合については、ライセンシーは自己名義で、特許権者を1被告として、特許法第67条(1)で規定されている裁判所における各種手続を提起することができる(同法第53条(5)~(6))。

 

(4) ライセンス・オブ・ライトの取消し(同法第54条、同規則72~75)

(i) 特許権者による取消し

 ライセンス・オブ・ライトの申請があったことが登録簿に記入された特許の特許権者は、その記入が行われた後、いつでも所定のフォーマットにより(様式30)、当該記入の取消しを申請することができる。取消申請に際し納付すべき手数料は70シンガポールドルである。

 登録官からの取消申請受領通知を受領後2ヵ月以内に、当該記入が行われなかったならば納付されるべきであった全ての更新手数料の残額が特許権者により納付され、登録官が当該特許に基づく現存のライセンスがないか、当該特許に基づく全てのライセンシーが当該申請に同意していることを認めたときは、当該記入を取消すことができる。

 

(ii) 特許権者以外の者の申請による取消し

 また、当該特許についてライセンスを禁じる契約に利害関係を有し、ライセンス・オブ・ライトの申請が登録簿に記入される前に、特許権者がその契約により当該特許に基づくライセンスの付与を禁じられていたことを主張する者は、当該記入が公報で公告された日から2ヵ月以内に取消しを申請することができる(様式30)。この場合、取消申請の裏付けとして、取消申請人の権利の内容及び取消申請人が依拠する事実を詳細に記載した陳述書を提出する。特許権者以外の者の申請による取消しを行う場合、登録官から特許権者に対しその旨が通知されるので、特許権者はその通知の受領後2ヵ月以内に、ライセンス・オブ・ライトが認められなかったならば納付されるべきであった全ての更新手数料の残額を納付しなければならない。

 

(iii) 取消し申請に対する異議申立

 上記(i)の特許権者による取消申請が行われた場合には誰でも、上記(ii)の特許権者以外の者による取消申請が行われた場合は特許権者が、取消申請があったことが公報で公告された日から2ヵ月以内に、所定のフォーマット(様式31)により、異議を申し立てることができる。

 

【留意事項】

 ライセンス・オブ・ライト制度は、利用の前提として、ライセンスを第三者に広く開放することが前提になっている。そのため、特許権によってシンガポールにおける自己の実施行為を独占し、又は、ライセンシーをコントロールしたい場合は、この制度の利用はお勧めできない。一方、特許を広くライセンスしたい場合は、納付すべき更新手数料が本来の額の半額となるので、この制度の利用を検討するのも一案である。

■ソース
・シンガポール特許法
・シンガポール特許規則
・シンガポール知財庁(IPOS)ウェブサイト
http://www.ipos.gov.sg/Services/FilingandRegistration/FormsandFees/Patents.aspx ・ライセンス許諾用意の申請書フォーマット(様式28)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Forms%20and%20fees/patents/PF28A3.pdf ・ライセンス条件の決定の申請書フォーマット(様式29)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Forms%20and%20fees/patents/PF29A3.pdf ・反対陳述書フォーマット(様式3)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Forms%20and%20fees/patents/PF03A5.pdf ・取消申請のフォーマット(様式30)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Forms%20and%20fees/patents/PF30A3.pdf ・取消申請に対する異議申立のフォーマット(様式31)
http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Forms%20and%20fees/patents/PF31A4.pdf
■本文書の作成者
辻本法律特許事務所
Donaldson & Burkinshaw LLP
■協力
一般財団法人比較法研究センター 不藤真麻
■本文書の作成時期
2014.01.17
■関連キーワード
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